日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

ASEAN+3蔵相会議共同声明(仮訳)

(2001年5月9日 アメリカ合衆国・ホノルル)

 

1. 我々、ASEAN、中国、日本、韓国(ASEAN+3)の財務大臣は、ホノルルにて会議を開催し、最近の東アジア域内での経済・金融の動きについて意見交換を行い、また、チェンマイ・イニシアティブの具体化及び資本フローの監視をはじめとする東アジアにおける域内協力の進展状況をレビューし、更なる協力について議論した。

 

 

2. マレーシアのダイム大蔵大臣が会議の議長を務めた。

 

 

東アジアの金融協力の強化

 

 

3. 我々は、最近の世界・域内経済及び金融情勢の動きについて意見交換を行った。この点、我々の議論のために大いに参考となった、アジア開発銀行(ADB)による東アジアの経済・金融情勢についての最新情報の提供に感謝した。

 

 

4. 輸出の伸びや国内消費者需要の回復に支えられ、域内経済は昨年力強い成長を遂げた。主要先進国についての見通しが明るくないため、本年における域内経済の成長はより限られたものとなるという予想の下、幾つかのメンバー国が、金融及び企業部門における改革への弛まぬ努力を続ける一方、金融緩和及び拡張的財政政策を志向しつつあることに留意した。

 

 

5. 地域レベルでは、特に域内の自助・支援メカニズム、国際金融改革、及び短期資本フローの監視といった分野における政策対話や地域的取組の強化を継続していく。この点、我々は、各メンバー国において資本フローの最新の状況を把握し、また、メンバー国の自発的な意思に基づき、二国間で資本フローについての情報を交換することに合意した。現在、貿易、農業及び観光といった幅広い分野における東アジアでの協力に見られるように、金融協力における取組みは他の分野でのより緊密な協力によって補完されてきている。

 

 

6. 東アジアにおける自助・支援メカニズムを更に強化するためのチェンマイ・イニシアティブの具体化に大きな進展が見られたことを歓迎する。

チェンマイ・イニシアティブの主要な構成要素の一つであるASEANスワップ協定は、20001117日より総額10億ドルに引き上げられ、また、全てのASEAN加盟国を含むよう拡大された。

 

チェンマイ・イニシアティブに基づく二国間スワップ及びレポ取極のネットワークについては、韓国、マレーシア、及びタイがそれぞれ日本との間で二国間スワップ取極について実質的合意に至った。高級実務者達は、ASEAN、中国、日本及び韓国の間の二国間スワップ及びレポ取極のネットワークの構築に向けての取組みを引き続き行っていく。

 

我々は、二国間スワップ取極の実際の運用状況及びその他の関連事項を考慮し、3年以内に、チェンマイ・イニシアティブに基づく二国間スワップ取極の基本的原則について見直すことに合意した。

 

二国間スワップ取極の実施に際して域内の経済情勢の監視の強化が重要であることに鑑み、我々は、経済情勢のレビュー及び政策対話の有効性を高めるための方策について議論するための検討部会を設置することに合意した。

 

 

7. 人的資源の開発について、我々は、ASEAN+3各国の財務省及び中央銀行の職員を対象に、中国における経済改革及び発展に関するトレーニング・コースを昨年10月と今年2月にそれぞれ北京と上海において開催した中国の取組みに感謝した。また、昨年10月のASEAN諸国の高級実務者達によるソウルへの視察旅行における韓国の協力に感謝するとともに、今年の後半にASEAN諸国の財務省及び中央銀行の職員を対象とした金融・企業再編に関するトレーニング・プログラムを開催するという韓国の提案を歓迎した。さらに、域内での資本フローの監視のためのASEAN事務局を通じたメンバー国に対する財政支援、及び、金融の安定を促進するための他の適切なメカニズムの研究についての財政支援を供与するという日本の提案を歓迎した。

 

 

8. 域内の調査・研修機関のネットワ−クの一環として、韓国が、早期警戒システムの構築及び域内での共同監視に関する国際セミナーを昨年11月にソウルで開催したことに感謝した。また、今後も更にセミナーを開催していく等、適切なプロセスを通じて、早期警戒システムに関する意見交換や東アジア各国に適した早期警戒システムのモデルの開発への取組みを引き続き行っていくことに合意した。