日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

ASEAN+3財務大臣会議共同声明(仮訳)

2002 510日 中国・上海)

 

 

 

1.  我々、ASEAN、中国、日本及び韓国(ASEAN+3)の財務大臣は、上海にて会議を開催し、最近の経済・金融情勢及び経済成長のモメンタムを持続するために参加各国が採用している政策について意見交換を行った。また、チェンマイ・イニシアティブ、域内政策対話の強化のための努力、資本フローの監視及び早期警戒システムを含む地域金融協力の進展についてレビューし、議論を行った。

 

2.  ミャンマー連邦のキン・マウン・テイン財政歳入大臣が会議の議長を務めた。

 

 

 最近の域内経済・金融情勢

 

3.  我々は、参加各国における最近の経済情勢について意見交換を行い、2001年には米国における911日の事件により悪化した世界需要の弱さの結果として、地域経済の成長が減速したことに留意した。外需の弱さの影響を軽減し、経済成長を持続するため、参加各国のほとんどが金融を緩和し、拡張的な財政措置を採った。また、経済の減速にもかかわらず、参加各国は金融・企業部門の再構築及び構造改革における大きな進展を継続した。

 

4.  我々は、米国及び欧州において回復の兆しが本年初以来現れていることに留意した。不確実性が残る一方、我々は、世界経済が本年徐々に回復すること、及び本年後半においてその勢いが加速することを確信している。これに関連して、我々は、持続可能な経済成長を促進するための適切な方策の重要性を強調した。我々は、構造改革、特に規制・監督の枠組みの強化や、実施中の金融・企業部門の再構築を加速させるための方策を促進するために一層努力すべきである。

 

 

東アジア金融協力の強化

 

5.  域内金融取極に関し、我々は、チェンマイ・イニシアティブの具体化において大きな進展が見られたことを喜ばしく思う。これまでに、日本・韓国、日本・タイ、日本・フィリピン、日本・マレーシア、中国・タイ及び中国・日本の間で6件、総額170億米ドル相当の二国間通貨スワップ取極(BSA)が締結、署名された。中国・韓国及び韓国・タイの間の2件の二国間通貨スワップ取極に係る交渉は既に進んだ段階にあり、他方、韓国・マレーシア、韓国・フィリピン間においては二国間通貨スワップ取極については基本的合意に達している。その他、インドネシア・日本、日本・シンガポール、中国・マレーシア及び中国・フィリピンの間の4件の二国間通貨スワップ取極に係る交渉が開始されている。加えて、チェンマイ・イニシアティブに合わせて、日本・韓国、日本・マレーシア間の既存のスワップ取極が総額75億ドルで更新された。

 

6.  昨年5月以来、経済レビュー及び政策対話の有効性を強化するための枠組みと方法を議論するため、財務省及び中銀の高級実務者によるASEAN+3検討部会が2回開催された。その結果、財務大臣・中銀総裁代理が経済問題及び政策問題を議論するために非公式に年1回会議を行うこととなった。我々は、200244日、ミャンマーにおいて最初のこのような会議が開催されたことを歓迎した。我々は、域内の政策対話プロセスを強化することに引き続き強い意志を有している。

 

7.  資本フローの監視について、我々は、7カ国(ブルネイ、インドネシア、日本、韓国、フィリピン、タイ及びベトナム)が、短期資本フローデータの二国間交換に合意したことに留意した。我々は、日本・ASEAN金融技術支援基金が行うASEAN加盟国における資本フロー監視システムの強化への貢献を歓迎した。短期資本フローの監視及び慎重な管理を更に強化するために、本年10月、北京において、短期資本フローに関する高級事務レベルセミナーが開催される予定である。

 

8.  我々は、ADBによる域内早期警戒システムの開発のための技術支援及び東アジアの経済・金融情勢に関する定期的な最新情報の提供を高く評価しつつこれに留意した。我々はこの取組みが早期に成功裡に終了し、ひな型がASEAN+3加盟国に配布されることを期待している。

 

9.  また、我々は、ASEAN+3各国の財務省及び中央銀行の実務者に対する「中国における経済改革及び開発」の研修に対する中国の継続的な努力を高く評価した。