日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

ASEAN+3 財務大臣会議 共同声明(仮訳)

2004年5月15日 韓国・済州島)

 

 

 

 

1. 

  我々、ASEAN、中国、日本及び韓国(ASEAN+3)の財務大臣は、済州島にて、シンガポールのリム・フン・キャン首相府大臣兼第2財務大臣の議長の下、第7回目の会議を開催した。

 

2. 

  我々は、経済・金融にかかる最近の情勢及び政策について意見交換を行い、域内の経済見通しについてのアジア開発銀行(ADB)千野忠男総裁による報告に留意した。また、我々は、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)、ASEAN+3リサーチ・グループ及び資本フロー・モニタリングを含む、地域金融協力の進展についても議論を行った。 

 

最近の域内経済・金融情勢

 

 

3. 

  域内の経済成長は、2002年の5%から2003年には6.3%となり、我々は、こうした回復力の持続を喜ばしく思う。成長は、多くの国では緩和的な金融・財政政策に支えられており、こうした措置が国内需要の更なる拡大に貢献した。企業・金融部門のリストラや、財政再建、投資環境の改善にかかる継続的な努力も、経済環境の改善に資した。これに関して、ASEAN+3諸国は追加的な成長の源泉として世界経済の回復に積極的に貢献してきた。我々は、中国経済の回復力や先を見通した経済運営や、日本及び韓国経済の確固とした回復に勇気付けられた。これは、ASEAN+3地域の経済成長の持続に強固な基礎を提供するだろう。

 

4. 

  我々は、域内の経済成長のモメンタムを更に強化するために、財政再建や投資環境の改善を続けることが重要であることを再確認した。世界経済の回復の持続により、本年の域内の成長見通しは更に高まっている。我々は、エネルギー価格の上昇や金利変動が世界経済に与えうる影響について留意した。 

 

東アジア金融協力の強化

 

 

5. 

  チェンマイ・イニシアティブ(CMI)に関して、我々は、二国間通貨スワップ取極(BSA)のネットワークがさらに拡大したことを喜ばしく思う。2003年8月のフィリピン・マカティ市における前回会議以降、さらに4件の二国間通貨スワップ取極が締結された。これにより二国間通貨スワップ取極の総数は16件に、またネットワークの規模も365億ドルとなった。

 

6. 

  我々は、チェンマイ・イニシアティブについて、その有効性を強化する方策を検討するために見直しを行うことに合意した。ワーキング・グループがその見直しを行った上で2004年末までに我々の代理に結果を報告し、我々の代理が次回のASEAN+3財務大臣会議において我々に報告を行うことになる。

 

7. 

  アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)に関して、我々は、6つのワーキング・グループでなされた多くの進展を喜ばしく思う。民間部門との協議を踏まえたこうした努力は、より深みのある流動性の高い域内債券市場の発展に大いに貢献し、アジアの豊富な貯蓄を域内の生産的な投資に効率的に配分することに資するだろう。我々はまた、6つのワーキング・グループの活動を調整するために、ABMIフォーカル・グループが設立されたことに留意した。

 

8. 

  我々は、アジア開発銀行(ADB)による「信用保証メカニズム及び域内の決済メカニズムに関する調査」実施における支援、及び、日本とマレーシアによる「国境を越えた債券投資・発行における障害の調査」実施にかかる共同の努力に感謝した。我々は、域内の信用保証および投資のメカニズムをさらに強化する方法を検討するために、韓国と中国とがワーキング・グループの共同議長を務めることを支持した。我々はまた、アジア債券市場育成イニシアティブのもとで、現地通貨建て債券の発行及び投資を促進するために規制を改革するメンバー国の努力を歓迎した。

 

9. 

  我々は、市場の透明性を高め、発行体や投資家による意思決定プロセスを促進するために、債券の発行体や市場インフラに関する情報発信が重要であることを認識した。この観点から、我々は、本日のアジア・ボンド・ウェブサイト(ABW)の立上げを歓迎した。アジア・ボンド・ウェブサイトは、域内の債券市場に関する情報や、アジア債券市場育成イニシアティブのそれぞれのワーキング・グループでなされた進展に関する最新情報を、一般の人々に提供するという重要な役割を果たすであろう。我々はまた、域内の債券市場育成や地域経済統合における民間部門の積極的な関与が重要であることに留意し、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の下で行われるこうした取組みを歓迎した。

 

10. 

  我々はまた、域内における債券市場の育成にとってキャパシティ・ビルディングに向けた努力が重要であることを認識し、メンバー国を支援するための日本ASEAN金融技術協力基金(JAFTA)による技術支援を歓迎した。我々は、この分野における、韓国とマレーシアの追加的な技術支援の申し出に感謝した。日本ASEAN金融技術協力基金はまた、域内経済の政策対話プロセスの有効性を高めるために、資本フロー・モニタリング体制や、正確かつタイムリーな統計作成能力を強化するための技術支援をメンバー国に供与している。我々はまた、域内経済・金融協力に関する研修・セミナーを継続するとの中国の申し出を歓迎した。

 

11. 

  我々は、2004年3月にマニラで行われた第1回リサーチ・グループ会合における更なる地域金融協力に関する活発な議論に留意し、今後も、リサーチ・グループにおいて更なる議論を続けることに合意した。これは、メンバー国における共通の理解を深めるとともに、域内における知的な資本蓄積を促進させるだろう。この点について、我々は、さらに4つの研究を行うことに合意した。我々は、日本と中国によるこれらの研究に対する資金支援の申し出を歓迎した。

 

12. 

  我々は、アジア開発銀行と有益な対話を行い、アジア開発銀行がメンバー国に対し供与している技術支援に感謝の意を表明した。

 

13. 

  我々は、ASEAN+3の枠組みにおける全般的な進展を喜ばしく思い、域内金融の深化とより強固な安定の持続を確実にするための上記のイニシアティブの実施促進も含め、域内のより緊密な通貨・金融協力実施に向けた我々のコミットメントを再確認した。

 

14. 

  新BIS規制について、我々は、健全な監督基準を世界的に促進させるとの目的に一般的に合意し、非G10諸国における実施時期に関しては、一定の柔軟性が新たな監督枠組みへの円滑な移行に資することを再確認した。

 

15. 

  我々は、2005年にトルコ・イスタンブールにおいて会議を開催することに合意した。 

16. 

  我々は、第7回ASEAN+3財務大臣会議をホストした韓国に謝意を表した。