日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

東南アジア中立地帯宣言(仮訳)

(第1回ASEAN特別外相会議 1971年11月27日 クアラルンプル)

 

 

 われわれインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール各外相及びタイ国家評議会特使は、

東南アジア諸国連合における経済、社会、文化の各分野において諸国の協力をもたらした地域的協力が有益であることを信じ、

国際緊張の緩和と東南アジアにおける恒久平和の達成を希求し、

国連の崇高なる目的、特に全ての国家の主権尊重、領土保全、威嚇又は武力の不行使、国際紛争の平和的解決、平等と自決及び内政不干渉の諸原則に啓発され、

国家の平和的共存を原則の一つとして宣言した1955年のバンドン会議における「世界平和と協力の推進に関する宣言」が、なお妥当することに信義し、

すべて国家は、大小にかかわらず、内政問題に関し、その自由、独立、統一を妨げる外部からの干渉なしに国家として存続する権利を有することを認識し、

平和、自由、およびそこなわれない独立の維持に奉仕し、

世界平和、安定と調和を促進するため、域内、域外を問わず、すべての平和と自由を愛する諸国と協力して現在の諸問題と新たな展開とに対処する必要性を信じ、

「ラテン・アメリカにおける核兵器の禁止に関する条約」及びアフリカを非核地帯と宣言したルサカ宣言に示される、国際的紛争と緊張の地域を減少させることによって、世界平和と安全保障を促進するため非核地帯の設置へと向う重大な傾向を認識し、

1967年にASEANを設立したバンコク宣言の原則、「東南アジア諸国は、域内の経済的・社会的安定の強化と諸国の平和的・進歩的発展に主要な責任を有し、いかなる形、あるいは言明であれ、外部からの干渉に対しては、諸国民の理想と希望とに従い、国民的一致を守るため、その安定と安全とを確保すべく決心している」に対するわれわれのコミットメントを繰り返し、

東南アジアの中立化は希求すべき目標であり、われわれはその実現を期するため方法と手段とを探求すべきことに同意し、

独立と経済的・社会的幸福とに不可欠な平和と安定の条件を確保しようとする、東南アジア諸国民の深い希望を効果的に表明するための共同行動にとって、今や好機であると確信し、

ここに宣言する。

1)インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール及びタイは、東南アジアが平和、自由、中立の地帯として、いかなる形又は方法であれ外部勢力の干渉から自由であるとの認識及びその尊重を保証するため、必要な努力を率先して遂行すべく決心している。

2)東南アジア諸国は、諸国の力、団結及びより緊密な協力に寄与するであろう協力範囲拡大のための共同の努力を行なう。

1971年11月27日(土曜日)クアラルンプルにおいて

インドネシア共和国外務大臣アダム・マリク

マレーシア総理兼外務大臣トゥン・アブドゥル・ラザク・ビン・フセイン

フィリピン共和国外務長官カルロス・P・ロムロ

シンガポール共和国外務大臣S・ラジャラトナム

タイ王国国家評議会特使タナット・コーマン