日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

東南アジア非核兵器地帯条約(仮訳)

 

 

付属議定書I

事実調査団の手続き

1.第13条の規定に従い事実調査団を要請した締約国(以下、「要請国」という)はその要請に関し以下の特定事項を執行委員会に提出する。

(a)疑義又は懸念及びそれらを有するに至った理由

(b)疑義が生ずる状況が発生した場所

(c)疑義を生ずる根拠となった関連条約規定

(d)その他の関連する情報

2.事実調査団の要請を受けた後、執行委員会は速やかに、

(a)事実調査団が派遣されるべく要請される締約国(以下、「受諾国」という)に要請の受諾を通知する。

(b)その要請を受諾してから3週間以内に、その要請が議定書1の規定に合致していること、及び本条約の趣旨から明らかに逸脱していないことを決議する。また、この決議においては要請国も受諾国も参加できない。

3.その要請がパラ1の規定に合致しない、或いは、本条約の趣旨から明らかに逸脱していると執行委員会が決議する場合、執行委員会はその要請に対し更なる行動をとってはならない。また、執行委員会はその結果を要請国及び受諾国に対し通知しなければならない。

4.その要請がパラ1の規定に合致する、或いは、本条約の趣旨から明らかに逸脱していないと執行委員会が決議する場合、執行委員会は直ちに特に調査団の派遣予定日を示し、受諾国に対しその要請にかかる事実調査団を推し進める。その派遣予定日は、受諾国が事実調査団の要請を受けた時から3過間以内とする。また、執行委員会は直ちに、IAEAからの3人の専門家からなる事実調査団を編成する。但し、このIAEAからの専門家は要請国または受諾国の隣接国国籍であってはならない。

5.受諾国は、右4.に従い事実調査団の派遣要請に受け入れなければ、ならない。また、受諾国はFact-Fiding mission の効果的実施を助勢すべく執行委員会と協力しなければならない。特に、受諾国は事実調査団が問題の場所への立ち寄りを妨害しないよう迅速な対応をしなければならない。受諾国は、事実調査団がその調査を効果的に実施できるよう3人の査察官に対し、特権と免除権を与えなければならない。その特権及び免除権は、書類及び記録書の不可侵性、逮捕、拘留及びその活動と言動にかかる法的処分に対する免除権も含む。

6.受諾国は、精密な設備を保護する権利及び本条約に関係しない秘密の情報・データを摘発されない権利を有する。

7.事実調査団は、その機能を履行するに当たり、

(a)調査団は「受諾国」の法律及び規則を正当に尊重しなければならない。

(b)本条約の目的と対象とならない活動を行ってはならない。

(c)執行委員会に対して暫定又は中間の報告書を提出しなければならない。

(d)不当に遅滞なくその任務を終了し、その後合理的な期間内に最終報告書を執行委員会に提出しなければならない。

8.執行委員会は、

(a)事実調査団によって提出された報告書を検討し、条約違反の有無につき決定する。

(b)直ちにその決定を「要請国」と「受諾国」に伝達する。

(c)その決定に関する完全な報告書を委員会に提出する。

9.「受諾国」が右4.に規定する事実調査団の要請に応じることを拒否する場合、「要請国」は執行委員会を通じて総会の開催を要請する権利を有する。執行委員会は速やかに本条約第9条の3(e)に従って総会に会合の召集を要請しなければならない。

 

議定書草稿

 

 本議定書の締約国は、

全般的かつ完全な核兵器削減の達成と、それにより東南アジアを含む国際的な平和と安全の確保に向けた努力に貢献することを決意し、東南アジア非核兵器地帯条約に注目し、次の通り合意した。

 第1条

 締約国は東南アジア非核兵器地帯条約(以下、「条約」という)を尊重し、締約国による条約及び同議定書の違反を成す(constitute)いかなる行為にも寄与しないことを約束する。

 第2条

 締約国は、全ての締約国に対して核兵器を使用したり、その脅威を与えないことを約束する。更に、東南アジア非核兵器地帯において、核兵器を使用したり、その使用の脅威を与えないことを約束する。

 第3条

 本議定書は中国、フランス共和国、ロシア連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、及びアメリカ合衆国による署名のために開放される。

 第4条

 締約国は、寄託国への文書による通知により、第19条に従う条約の修正が効力を発生することにより生じる議定書の下での義務への変更の受け入れ等を示すことを約束する。

 第5条

 本議定書は恒久的性格を有し、無期限に効力を有する。但し、各締約国は、本議定書の内容に関して例外的な出来事が発生し、その至高の国益が阻害されたと判断した場合、その国家主権の行使において、本議定書から脱退する権利を有する。

 第6条

 本議定書は批准を条件とする。

 第7条

 本議定書は、寄託国がその批准書を寄託した日から効力を生ずる。寄託国は、本条約締約国及び本議定書の締約国に対し批准書の寄託を通知しなければならない。