日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

 [文書名] 日本及びASEAN首脳会議共同声明

[場所] クアラルンプール

[年月日] 1997年12月16日

 

21世紀に向けた日・ASEAN協力

 

1.日本国総理大臣とASEAN加盟国元首・首相は、日本とASEAN諸国が長年に亘り緊密な協力関係を醸成し、アジア太平洋地域の平和、安定及び繁栄に貢献してきたことを満足をもって留意した。日・ASEAN関係の基礎をより強固なものとしていくことの必要性、並びに、この地域及び世界が直面する共通の諸問題に対処するための協調的努力の重要性を認識しつつ、首脳は、より幅広くかつより奥深い関係を築くべく、現在の友好関係を更に強化することにより、21世紀へ向けた日・ASEAN協力を一層推進していくことを決意した。

 

パートナーシップ強化のための対話の緊密化

 

2.首脳は、将来の世代が平和と安定の中に暮らし、社会的及び経済的な開発を持続していけるよう協力していくとの決意を表明した。より強固なパートナーシップを醸成すべく、首脳は、あらゆるレベルでの対話と交流を緊密化することを決定した。首脳は、ハイレベルでの対話の重要性に特に留意し、可能な限り頻繁に首脳会談を開催することを決定した。首脳は、政治及び安全保障に関する対話及び交流を強化していくことの重要性を認識した。

 

人と人との交流及び文化交流の促進

 

3.首脳は、政策決定者のレベルのみならず、他の分野、特に青年や有識者間での人と人との直接のふれあいを、交流計画を通じて層促進することを決定した。首脳は、日・ASEAN双方の有する豊かな伝統や文化を維持し、発展させていくとともに、文化面での交流や協力を通じて相互理解を深めていくことの重要性を認識した。この関連で、首脳は、多国籍文化ミッションの目的とこれまでの作業の進展を歓迎し、同ミッションによる提言への期待を示した。

 

地域の平和と安定の促進

 

4.首脳は、地域の平和と安定を促進するための緊密な協力の重要性を認識した。この関係で、首脳は、安全保障協力および安全保障体制を含む安全保障に関する事項についての見方及び展望についての意見交換を行った。首脳は、また、ASEAN地域フォーラム(ARF)において協力を強化する意図を確認した。日本側は、ASEAN側が東南アジア・平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)に重要性を付与していることについて認識した。日本側は、東南アジア非核兵器地帯(SEANWFZ)条約の発効が、この地域の安全保障の強化に向けたASEANの重要な努力であるものとして歓迎した。

 

経済面での協力の強化

 

5.首脳は、貿易と投資の拡大及び産業協力の緊密化に照らして、日本とASEANとの間の相互依存が増大していることを認識した。首脳は、このため、この地域の発展及び共有された繁栄を持続させることを目指し、緊密な経済関係を一層堅固なものとすることを決定した。

 

6.日本側は、ASEANが力強い経済ファンダメンタルズを有していることから、現在の経済的困難にもかかわらず、経済成長を持続するダイナミックな地域であり続け、日本とASEANとの間の経済面における協力を強化するための大きな機会を提供するとの信頼を表明した。日本側及びASEAN加盟国側は、各国経済の競争力を一層強化するための経済構造改革の重要性を強調した。

 

7.首脳は、97年12月2日のクアラ・ルンプールにおける会合において、日本とASEANの蔵相が、現下の地域の金融情勢に対処するための各国における努力及び地域的・国際的協力につき議論したことを留意した。首脳は、マニラ・フレームワークの早急な実施に関する蔵相間の合意を、地域の金融安定促進に向けた建設的な一歩であるとして支持した。首脳は、マニラ・フレームワークの下でのイニシアティブを推進し、IMF、世銀、ADB、国際的金融監督機関と緊密に協力するため、アジア蔵相・中央銀行総裁代理会合を98年の早期に日本が開催することに留意した。ASEAN諸国は、最近の金融パッケージに対する日本の貢献に感謝の意を以て留意し、双方は、日・ASEANの蔵相間で経済・金融問題についての協力を推進することの重要性を再確認した。

 

8.ASEAN側は、日本により供与された有益かつ効果的な援助に感謝の意を表明した。日本側は、政府開発援助(ODA)や他のプログラムを通じてASEAN諸国の努力を引き続き支援するとともに、民間部門のイニシアティブを促進していくとの政策を再確認した。日本とASEANは、協力に当たり、以下の点を優先事項とする。

 

・市場アクセスや産業分野の構造変化につき取り上げていき、日・ASEAN貿易のバランスのとれた発展を促進

 

・高度技術及び環境に優しい技術を含むASEANへの技術移転を促進

 

・特に次の事項を通じ、ASEANの競争力を強化

 

 −ハード面及びソフト面のインフラストラクチャーの整備

 

 −裾野産業の強化

 

 −中小企業の近代化及び他の産業協力

 

 −人材育成。この関連で、日本は、ASEANから5年間で2万人を対象とした総合的な人材育成のためのプログラムを提案した。

 

 −環境管理及び環境保全に係る改善

 

・この地域のマクロ経済及び金融市場の安定の促進

 

・ASEAN内の経済格差及び貧困の軽減、並びにASEANの経済発展及びグローバリゼーションのメイン・ストリームヘのASEAN新規加盟国の統合を促進

 

・地域及びサブリージョンのプログラム、特に大メコン圏におけるプログラムを促進及び支援

 

・日・ASEANフォーラムの枠内において、又は同フォーラムと緊密に協力する形での適切なメカニズムを設置。例えば、日・ASEANの開発協力案件に関する意見・情報交換を行うための日・ASEAN開発ラウンドテーブルの新設や、産業協力の推進、ASEAN競争力の改善、新規加盟国への開発協力支援のために既存のAEM−MITIの下にCLMワーキング・グループ改組により、大臣レベルを両議長とする新しい組織を設置。

 

9.ASEAN自由貿易地域(AFTA)とASEAN産業協力(AICO)スキームの着実かつ完全な実施により、ASEAN内部の経済的連携が強化され、投資・生産基地としての競争力と魅力が高められるであろうとの見解を共有した。

 

10.首脳は、強化された多角的自由貿易体制が将来の繁栄に不可欠であることを認識し、開発途上国の経済状況を勘案しつつ、世界貿易機関(WTO)、アジア太平洋経済協力(APEC)等における活動を推進することにより、貿易の一層の自由化・円滑化を図るための作業を行っていく用意があることを確認した。この関連で、首脳は、公的部門と民間部門との間のより強化された相互連関と緊密な関係を促進することを決定した。

 

国際問題についての協力

 

11.世界全体及び特にこの地域の平和、安定及び反映に貢献するための努力において、首脳は、国際連合(UN)の諸機能の強化、特に国連安全保障理事会を含む国連の改革、及び軍縮と不拡散体制のための国際的努力の促進に向け、行動していくことを決意した。この関連で、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の進展を歓迎し、同機構の活動への継続的支援を再確認した。首脳は、特に次の分野における共同の努力を通じて、次世代の諸課題に協力に対処していくことの必要性を強調した。

 

・環境保全の強化

 

・エネルギー資源の効率的及び持続的な使用の促進

 

・保健と福祉の向上

 

・国際テロリズム、小火器の不正取引、薬物、その他の国際的組織犯罪への対処の強化

 

・ASEANの経済成長の経験を開発途上国と分かちあうちめの{前3文字ママ}南南協力の強化

 

12.日本側は、次世代の挑戦に対応していくASEANの活力と決意を表すASEANビジョン2020の採択を歓迎した。

 

 

21世紀に向けた日・ASEAN協力−橋本総理の3つのイニシアティブ−

 

1.日本とASEANの間の対話・交流の緊密化

 

(1)首脳間の対話の強化

 

  1月の橋本総理のASEAN諸国訪問の際に提唱したように、種々の機会を捉え、日本とASEAN諸国との首脳間の対話を強化する。

 

(2)政治・安全保障対話の強化

 

  日・ASEANではARFをはじめとする多国間の対話や二国間の高級事務レベル会合や防衛当局間協議があるが、これらの安全保障に関する対話・交流を強化。

 

(3)日・ASEAN間の幅広い交流、文化交流の一層の促進

 

○多国籍文化ミッション

 

 1月の橋本総理のASEAN諸国訪問の際の提案に基づく、多国籍文化ミッションは、11月の会合で日・ASEANの文化交流・文化協力における優先分野を決定した。明年2月の各国巡回を踏まえてミッションが明年4月に纏める提言(アクション・アジェンダ)を参考に日・ASEANは今後の文化交流・文化協力の促進を行っていく。

 

○日・ASEAN政策のシンポジウムの開催(明年3月、マニラで開催予定)

 

 今次日・ASEAN首脳会議における議論を踏まえた日・ASEAN協力のあり方につき、日・ASEANの有識者が明年3月マニラにて行うシンポジウム(フィリピンの戦略開発研究所主催)に協力を行う。

 

2.日・ASEAN蔵相会議の定期化等新たな局面を迎えるASEAN経済への我が国の協力

 

(1)通貨・金融の安定のための協力

 

○マニラ・フレームワークヘの支持の確認

 

○IMFを中心とする国際的な支援の枠組みの中での支援の実施

 

○金融セクターにおける規制・監督能力強化のため、二国間の技術協力に加え、IMF、世銀、ADB等を通じた支援の拡充

 

○日・ASEAN蔵相会議の定期化等マクロ経済・通貨・金融分野における日・ASEAN間の対話の強化

 

(2)ASEANの経済構造改革や安定的・持続的発展のための支援

 

○「日・ASEAN総合人材育成プログラム」の開始。

 

(a)留学生を中心とする将来の政治的・社会的リーダーの育成、(b)経済政策、中小企業政策、環境行政等の経済・社会運営等に関わる行政官、(c)民間実務者・技術者の育成に焦点を当てた人材育成を行い、5年で2万人を目処に受け人れを行う他専門家派遣等を実施。そのために民間とも協力。低利の円借款の活用。

 

○経営・技術等に関する高等教育や研修の強化に向けた協力

 

 ASEANの産業構造高度化を支える理工系・技術系、経営等の分野を中心とした高等教育機関のレベル向上、域内協力の推進によるASEAN全体の人材のレベル向上を目指し、ODAスキーム、留学制度、日系企業の協力等を連携させる協力を検討。(この関連で、既に技術習得済みの産業界(自動車産業分野等)の人材に継続的に研修機会を提供する予定。)

 

○円借款標準金利の引き下げ

 

○インフラ整備

 

 民活インフラ整備のための世銀、ADB等の取り組みへの支援の拡充、輸銀融資の活用、180億ドルの貿易保険引受枠の設定、日・ASEAN各国の貿易保険機関間の協力の強化、各国の関連制度整備に係る研究・意見交換等を行う。広域インフラ事業に対する域内最優遇金利円借款の活用。

 

○中小企業、裾野産業育成等の協力。

 

 ASEANの産業高度化に不可欠の部品等の製造を支える中小企業・裾野産業育成のため、域内での各種工業会に対する組織化・活動ノウハウ提供、技術力・生産力向上のための協力(「アジア・プログラム」、「全社的品質管理協力」、「中小企業出張大学校コース」の新設)、我が国の中小企業政策の紹介等を行う。さらに、ASEAN産業の競争力強化に資するAFTA及びAICOの重要性に鑑み、AICO関連の裾野企業への支援のための貿易保険の活用についても共に検討。低利の円借款の活用。

 

○「日・ASEAN開発協力ラウンド・テーブル」の新設

 

各国のハイレベルの経済協力当局および案件に応じ民間関係者等が参加し、人材育成、南南協力、民活インフラ、メコン河流域開発等のASEANに跨る広域案件、環境等の地球的規模の問題につき議論を行う。

 

○CLM産業場カワーキンググループの改組により、上記ラウンドテーブルと連携を図りつつASEANの産業の現状を把握した上での産業協力方策の構築を共に進める。

 

3.国際社会が直面する諸課題への共同の取り組み

 

(1)「日・ASEAN南南協力プログラム」の開始

 

 ASEANがASEAN域内およびアフリカを始めとするASEAN域外の諸国に対して行う南南協力支援のため、我が国は日・UNDP人造り基金やJICAスキーム等を使用し、協力。

 

(2)地球的規模の問題への協力の強化

 

 地球的規模の問題、特に(イ)環境保全、(ロ)エネルギーの効率的使用、(ハ)世界福祉構想の推進等による世界の福祉・保健の向上、(ニ)国際テロ、銃器の不正取引等国際組織犯罪及び薬物問題等への対処について協力を進めていく。この観点から、森林火災対策及び森林保全のための協力の強化や日・ASEANテロ情報交換ネットワークを図っていく。