日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

小渕総理の対プレス発表

1128日マニラにて

 

 

 今回の首脳会議自体の評価は、この後議長として記者会見されるエストラーダ大統領にお任せしたいと思いますが、今後のASEAN3の協力の方向性を幅広い分野で示した共同声明が初めて採択されたことは、大きな成果でありました。今後この共同声明を具体的行動をもって着実にフォローアップしていくことが重要であり、私としても外務大臣他関係閣僚に指示して日本としての役割を十分に果たしていきたいと思います。

 私が今回の主たる成果と位置づけている点は、次の3つです。

 第一に、私は、奥田ミッションの報告も踏まえ、東アジアにおける人材の育成と交流を強化する包括的プランを発表し、各国首脳から高い評価が得られました。特に、議長のエストラーダ大統領からは、「小渕プラン」と呼ぼうではないかとの御発言がありました。我が国がこれまでも着実に実施してきた総額約800億ドルの対アジア支援策は、通貨・経済危機により大きな打撃を受けた東アジア諸国に対する資金面を中心とした緊急的な支援策でありました。東アジア諸国の経済は概ね危機を脱し回復基調にあることから、今後は、危機の再発を防ぎ中長期的に安定した経済発展の基盤を築くための協力が必要との認識から、そのための具体的な取り組みとして、今回「ヒト」を重視した支援策をとりまとめ発表した次第です。

 第二に、私は、ASEAN10が協力体として順調に発展していくために必要なASEANの域内経済格差是正や機構としてのASEANへの支援を強化・拡充することを表明し、ASEAN各国首脳より歓迎と感謝の意の表明がありました。私は、このような支援を通じて、ASEANが、我が国にとって、21世紀のアジアの平和と繁栄の実現に向けての力強いパートナーとなるであろうことを確信しております。

 第三に、明年我が国がG8議長国として主催する九州・沖縄サミットについて私の考えを説明し、各国首脳より貴重なご意見を伺うことができました。2000年という節目の年にアジアで開催されるこのサミットに、21世紀を展望しつつアジアの視点を反映すべく、今回各国首脳より頂いたご意見を念頭に置きつつ、今後ともアジア諸国との対話を一層強化していきたいと考えております。

 また、私はかねてから東アジアの重要なパートナーである日中韓3首脳の対話を思い描いてきましたが、今回、朝食会という形で初めて経済問題を中心に忌憚のない意見交換を行うことができたことは、私にとって大きな喜びであるとともに、北東アジアでの対話と協力の進展に弾みをつけることも期待されます。こうした東アジア地域で盛り上がりつつある協力強化の気運を更に大きなものとするため、引き続き対アジア外交に全力を挙げて取り組んでいく覚悟であります。

 最後に、今回の首脳会議を成功裡に主催されたエストラーダ大統領閣下を初めとするフィリピン政府の関係者の方々に対して深甚なる謝意を表して、私のマニラでの首脳会議を終えてのプレス発表といたします。

 今回の首脳会議の取材に当たられた皆様、本当に御苦労様でした。