日本ASEAN関係基本資料データベース
東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室
森総理の対プレス発表
平成12年11月25日
シンガポール
今回の首脳会議の評価については、この後議長として記者会見されるゴー・チョクトン首相からもお話があると思いますが、私なりの評価を申し上げれば、21世紀の東アジアの地域協力の方向性について、有益かつ前向きな議論ができたと考えております。
私が今回の主な成果と位置付けている点は、次の3つです。
第一に、ASEAN+3の枠組みを通じた協力を進めて行く上で、私より、パートナーシップの構築、開かれた地域協力、及び政治・安全保障も含む包括的な対話と協力を三原則として提唱したことを受け、東アジアの将来について活発な議論が行われたことは、20世紀最後の東アジアのサミットとしてふさわしいものとなったと考えます。昨日のASEAN+3会合では、「東アジア・サミット」といった考え方も提起されましたが、私としては、この三原則を踏まえて、「東アジア・スタディ・グループ」をはじめとする場で、どのような姿が適切かについてASEAN諸国との間で議論を深めていきたいと考えます。
第二に、現在東アジア諸国が直面するグローバル化とIT革命という課題に対応していくための具体的な協力策について、意見の一致を見たことです。特に、ITについては、日中韓が「e−ASEAN」の推進などのASEAN側の努力に連携・協力して行くことで合意を見たことは、東アジアの協力を展望する上で画期的なことであります。私は、ITをチャンスと捉えて活かしていくとの観点から、東アジアにおけるIT協力の方途を検討するための「東アジア産官学合同会議」を来年我が国で開催することを提案し、各国首脳の賛同を得ました。また、7月に発表した150億ドルの包括的協力策については、日・ASEAN協力のために重点的に用いることとし、政府ミッションの派遣等を通じその具体化に努力する考えです。
第三に、先程終了した日・ASEAN首脳会議では、「日・ASEAN賢人会議」の提言を踏まえ、21世紀において日・ASEAN関係を「ニュー・パートナーシップ」として強化して行くことを確認しました。私からは、人と人の交流、就中、21世紀を担う若者の交流が重要であるとの認識から、ASEANの高校生を我が国に招聘する新たな留学プログラムを提案し、ASEAN各国首脳より歓迎の意が表されました。私としては、ASEANを東アジアの平和と繁栄のパートナーと位置付けて協力関係の一層の発展に努力して参る所存です。
ASEANとの会合の評価は以上の通りですが、昨年に引き続き、今回も日中韓首脳の対話が実現し、その定例化について合意されたことは、私の大きな喜びであり、こうした対話の継続は、北東アジア、ひいては世界の平和と繁栄に資するものであると考えています。特に、日中韓経済協力共同研究の立ち上げの他、IT協力、文化・人的交流、環境協力等について具体的な協力の方向性を見出すことができたことは、21世紀の日中韓協力進展の第一歩となるものと確信しております。
なお、一つのエピソードをご紹介します。ゴー・チョクトン首相より、日本とASEANとの関係においては、福田ドクトリン、新宮沢構想、小渕プランといったアイデアがあったことの流れの中で、ITに関し、150億ドルの協力策を打ち出したことにつき「森e−アクション」と名付けようとの御提案がありました。私としては大変光栄であります。ただ、重要なことは、私の名前が付けられるかどうかということでは無論なく、皆さんのために、ITの発展、そのひずみの是正、関係国との協力の実を如何に挙げていくか、これを通じて我が国とASEANの協力・提携関係が来世紀に向けて更に進展してゆくということだと思います。
最後に、今回の首脳会議を成功裡に主催されたゴー・チョクトン首相閣下をはじめとするシンガポール政府関係者の方々に対して深甚なる謝意を表して、私のシンガポールでの首脳会議を終えてのプレス発表と致します。