日本ASEAN関係基本資料データベース
東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室
[文書名] 日・ASEAN包括的経済連携構想に関する首脳達の共同宣言
[場所]
[年月日] 2002年11月5日
我々、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国、ベトナム社会主義共和国、及び日本の首脳は本日、日・ASEAN首脳会議に参集し、
本年1月に小泉純一郎総理大臣によって提案された、日本とASEANとの間の幅広い範囲の経済連携構想を強化するための日・ASEAN包括的経済連携構想を想起し、
ASEANとの日本の交流30周年を記念して2003年に開催される日・ASEAN特別首脳会議により強調される日・ASEAN関係の重大な進展に鼓舞され、
日・ASEAN間の経済連携が拡大し、幅広い範囲の分野を含んでいることを確認し、世界の他の部分、とりわけ欧州や北米における地域経済統合の急速な進展が世界貿易の自由化を促進し、その地域の活力を刺激することに貢献してきていることを認識し、
ここに以下を宣言する。
1.我々は、経済的な連携及び連結は、他の地域にそうした経済統合を模索することが望ましいことを強調した。
2.我々は、そうした経済的な連携及び連結は、他の地域に築かれたものに匹敵する質のものとするべきであり、また出来る限り早期に完成させるべきものであるとの見解で一致した。
3.我々は、日・ASEAN間の包括的経済連携が、より大きな市場機会を創設すること、及び産業がより大きな規模の経済を享受できるようにすることを通じ、日・ASEAN諸国の経済により大きな市場機会を提供し、このような連携がこの地域に一層の安定と繁栄をもたらすとともに、日・ASEAN間にコミュニティー意識を育むとの見解を示した。
4.我々は、日・ASEAN間の高い質の経済的な連携及び連結を創設するために、日本とASEAN諸国は、貿易・投資の自由化のみならず、税関手続、基準認証、非関税措置を含み、かつ、これらに限定されない貿易・投資の促進・円滑化措置及び金融サービス、情報通信技術、科学技術、人材育成、中小企業、観光運輸、エネルギー、食料安全保障等その他の分野における協力を含む広範囲にわたる経済連携を模索すべきであると認識した。
5.我々は、日本とASEAN全体との間の包括的経済連携実現のための枠組みを検討する一方で、すべてのASEAN加盟国と日本が二国間の経済連携を確立するための作業を始めることが出来るという手法を承認した。我々は、日・ASEAN包括的経済連携に関わる外務大臣及び経済大臣による努力を歓迎し、日・ASEAN経済連携緊密化のための専門家グループの報告書に賛辞を与えた。我々は、また、このような経済連携のための協力を促進するための、運輸等他の分野の閣僚によるイニシアティブも歓迎し、奨励した。
6.前述の手法を促進する観点から、我々は、二国間経済連携を模索するための日本とASEAN各国との間の協議の進展に満足の意を表明し、このような二国間経済連携が日本とASEAN全体の間の包括的経済連携に発展し、拡大するようにすべきであることに合意した。
7.我々は、そのような積み上げ方式の目標は、日本とASEANの現在の経済的連携を強化すること、及びこれを基礎としてこのような経済連携を東アジア全体に発展・拡大させることであると認識した。
8.我々は、日・ASEAN包括的経済連携がこれらの地域間の貿易を拡大し、成長を高めることに留意した。日・ASEAN包括的経済連携によって、ASEANの対日輸出額は2020年までに20,630百万ドル増加するであろう。これは基準年(1997年)の44.2%に相当する。日本の対ASEAN輸出額は基準年の27.5%に相当する20,022百万ドル増加するであろう。
9.こうした理解に基づき、我々は、国や分野の包括性、相互主義及び互恵といった指針に従って、日・ASEAN包括的経済連携の実現に向けた具体的な計画と要素の基盤を提供する枠組みを日本とASEANとの間に築くことを決定した。
10.我々は、ASEANの途上国に対しては、WTO協定に従った特別かつ異なる取扱いを与えられるべきであり、また、ASEANの新加盟国に対しては更なる柔軟性が許容されるべきであることを確認した。
11.我々はまた、可能な自由貿易地域(FTA)の要素を含む、連携実現へ向けた措置の実施が、それぞれの国における経済レベルやセンシティブな部門を考慮に入れて、10年以内のできるだけ早期に完了されるべきであることを決定した。
12.我々は、日・ASEAN包括的経済連携はWTOのルール及び規律と整合的であるべきことを確認した。
13.我々は、積み上げ方式の実行可能性と有効性を認識した。したがって、包括的経済連携は実行可能な分野から開始すべきであり、自由化の側面を置き去りにすることなく、関係国に即座に利益をもたらすために迅速に実行できる以下のような分野に対処することができよう。
・連携に意味のある参加をするための競争力を向上させるための、ASEAN、特に、新加盟国に対する技術支援及びキャパシティビルディング
・貿易・投資の促進及び円滑化措置
・貿易政策対話
・商業(ビジネス)部門の対話
・ビジネスマンの移動の円滑化
・即座に相互利益をもたらすその他の措置
14.最後に我々はまた、日本とASEANの包括的経済連携の分野と範囲に責任を有する政府の高級実務者によって構成される委員会の設置を決定し、この委員会に対し、包括的経済連携を実施するための枠組みを検討し、起草し、2003年の首脳会議にその報告書を提出することを課した。我々はまた、二国間経済連携構築の進展について委員会に報告されるよう指示した。
2002年11月5日 カンボディア、プノンペンにおいて作成された。
ブルネイ・ダルサラーム国のために、
ハサナル・ボルキア国王
カンボディア政府のために、
フン・セン首相
インドネシア共和国のために、
メガワティ・スカルノプトゥリ大統領
日本国のために、
小泉純一郎内閣総理大臣
ラオス人民民主共和国のために、
ブンニャン・ヴォーラチット首相
マレーシアのために、
マハディール・ビン・モハマド首相
ミャンマー連邦のために、
タン・シュエ国家平和開発評議会議長
フィリピン共和国のために、
グロリア・マカパガル・アロヨ大統領
シンガポール共和国のために、
ゴー・チョクトン首相
タイ王国のために、
タクシン・シナワット首相
ベトナム社会主義共和国のために、
ファン・ヴァン・カイ首相