日本ASEAN関係基本資料データベース

東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻 山影進研究室

 

 

 [文書名] 日本ASEAN行動計画

[場所] 東京

[年月日] 2003年12月12日

 

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、経済成長を持続し、地域統合を強化し、また同時に地域外における経済的な相互依存を拡大し深化することにより、ASEANの経済競争力を高めるよう努めてきた。日本とASEANとの間の経済的な相互依存は着実に増大しており、ASEANは日本の第二位の貿易相手となっている。過去10年間における日本からASEAN諸国への民間直接投資は実質的な水準に達しており、これは、日本とASEAN諸国との間の緊密な経済的な連繋を明示するものである。日本は、二国間の政府開発援助(ODA)を供与することにより、ASEAN諸国における経済的及び社会的発展を支援し、それにより、地域における平和、安定及び繁栄に貢献してきた。日本は、また、ASEAN諸国を特別に重視し、政府開発援助や貿易・投資を促進することにより、これまでに築いた実績を土台として、ASEAN地域との間により強固な関係を創出することに深くコミットしてきた。

 

この点に関し、日本は、ASEANとの協力において次の分野に重点を置くこととする。

 

a.ASEANの統合を強化するための協力

 

(特に、ASEAN統合イニシアティブ(IAI)、メコン地域開発、ブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン東ASEAN成長地域(BIMP−EAGA)並びに力ンボジア、ラオス、ミヤンマー及びタイとの間の「経済協力戦略」を通じた格差是正並びに経済基盤の改善)

 

b.投資促進などのASEAN諸国の経済競争力を強化するための協力

 

(経済連携の形成、また、教育、人材育成及び制度的な能力構築の促進)

 

c.テロリズム、海賊行為及びその他の国境を越える問題に対処するための協力

 

(法執行機関に対する人材育成及び制度的な能力構築などのこれらの分野における協力の増大)

 

人材育成は、上記の3つのいずれの分野においても、進展するために必要な条件である。日本は、ASEAN諸国との協議及び調整の上、国際協力機構(JlCA)、海外技術者研修協会(AOTS)、海外貿易開発協会(JODC)等による技術協力、無償資金協力及び国際協力銀行(JBIC)による円借款並びに奨学金制度を通じて、特に「日・ASEAN人材育成トータル・プラン」の下での7つの主要な課題(政策・制度形成及び行政、産業とエネルギー、教育、地球規模問題(環境、感染症)、コミュニティーの能力向上、地域格差の是正(南南協力)、情報通信技術)において人材育成のための支援を強化する。

 

実需に応じ、これらの課題にかかる人材育成及び関連分野における日本のASEAN諸国に対する協力は、今後3年間で15億米ドルを超え、約4万人が参加する様々な交流プログラムを通じて実施されることが予想される。

 

上記の背景並びに2003年12月11日及び12日に東京で開催された日・ASEAN特別首脳会議の際の新千年期における躍動的で永続的な日・ASEANパートナーシップのための東京宣言の署名に従って、日本及びASEANの首脳は、以下の共同の行動及び措置を採択した。

 

1.行動のための共通戦略

 

A.包括的経済連携の強化及び財政及び金融面での協力

 

1.二国間の及び地域的なイニシアティブ

 

a.二国間の経済連携協定(EPA)の実現を迅速化する。

 

b.2003年10月8日にインドネシアのバリで署名された日・ASEAN間の包括的経済連携のための枠組みに示される次の措置を実施する。次の第一段の措置については早期に実施し、以下の第二段及び第三段の措置については協議を2004年初めから開始する。

 

●ASEAN、特に新規ASEAN加盟国に対する技術支援及び能力構築、貿易・投資の促進と円滑化、貿易・投資に関する政策対話、ビジネス部門の対話、ビジネス関係者の移動の円滑化、関税及び二国間貿易統計等の関連データの交換及び編集を含む、速やかに、かつ、相互に利益をもたらす措置

 

●貿易関連手続、ビジネス環境、投資、知的財産権、エネルギー、情報通信技術(1CT)、人材育成、中小企業、観光及びホスピタリティー、交通と輸送、基準認証及び相互承認に関する取決め、その他環境、自動車、バイオテクノロジー、科学技術、持続可能な森林管理、競争政策、食糧安全保障及び金融サービス協力を含む可能な技術協力プロジェクトの分野における円滑化及び協力

 

●日ASEAN間の累積原産地規則の基本原則、並びに関税分類及び貿易関税データの収集・分析について議論することによる、物品の貿易及びサービスの貿易及び投資の自由化

 

c.日本とASEAN全体との間の包括的経済連携協定についての交渉は、日本とASEANの加盟各国との二国間交渉の諸成果及びASEAN統合プロセスの一層の進展を考慮した上で、2005年初めからの開始に向けて最大限の努力を行う。日本とASEANは、実施に十分な期間を残す必要性を考慮して、可能な限り早期に交渉を終えるよう努力する。

 

d.新規ASEAN加盟国に5年間の追加的な猶予期間を与え、各国の経済レベル及びセンシティブな分野を考慮した上で、可能な自由貿易地域の要素を含む日・ASEAN包括的経済連携の実現へ向けた措置を2012年までの出来るだけ早い時期に実施する。

 

e.投資を円滑化し、起こり得る投資問題を解決するために、政府並びに貿易団体及び産業団体を含む民間部門からの参加を得て、日本アセアンセンターの費用負担による一連のセミナー及びワークショップを開催する。

 

f.ASEANからの輸出のために日本市場を更に開放し拡大する機会を探求するために、ASEANの貿易促進機関と協力して、日本アセアンセンターの費用負担による調査を実施する。

 

g.ラオスにおける社会経済開発のためのマクロ経済政策支援(フェーズII)、インドネシア及び力ンボジアにおける経済政策支援並びに支援を求めるその他のASEAN諸国に対する経済政策支援を行う。

 

h.日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会を含む日本の経済団体とASEAN加盟国の経済団体との間での一層の交流を奨励する。

 

2.金融及び通貨面での協力

 

a.地域の通貨金融危機の再発を防止するために、ASEAN+3財務大臣会議の枠組みにおけるチェンマイ・イニシアティブの下で二国間スワップ取極(BSA)のネットワークを完成し、地域の金融協力の強化に関する更なる研究を促進する努力を強化する。

 

b.地域の完全な経済回復を確保し、アジアの資本市場の発展におけるベストプラクティスの採用を促進し、日本とASEAN諸国が地域の資源をより良く活用するための新たなモダリティを採用することを奨励するために、アジァ自身の国際金融制度を強化する一環として、引き続きアジア債券市場育成イニシアティブを支持する。

 

c.域内の資金の流れを円滑にするために、よりバランスの取れた金融制度を形成するよう努力し、アジア通貨建て債券の発行を支援する。

 

d.地域の高い貯蓄がASEAN諸国の持続可能な開発のための長期的投資に直接供給されるような地域の債券市場を発展させる努力を強化する。この目的のために、日本は、直接に、また、アジア開発銀行(ADB)、ASEAN事務局等の関連する組織を通じて、様々な援助により具体的な支援を必要に応じてASEAN諸国に提供する。

 

e.日本は、現地通貨建て債券の発行手続及びこのような債券に対する保証の供与を円滑にすることを支援するために、国際協力銀行(JBlC)及び日本貿易保険(NEXI)等の日本の関連団体の様々な機能を活用して、地域債券市場の発展を促進する。

 

f.再保険制度の検討を通じて、NEXIとASEAN輸出信用当局(ECA)との間の連繋を強化し、輸出信用の分野での人材育成を強化する。

 

g.JBICとASEAN輸出信用当局との間の貿易金融における情報交換、ネットワークづくり及び協力を継続する。

 

3.税関手続

 

情報通信技術を活用して税関手続の簡素化を促進し、税関手続を可能な限り関連する国際的な基準に調和させることにより、貿易の円滑化に協力する。日本の支援による技術協力プロジェクトの形成のための協力と対話を強化する。

 

4.知的財産権の面での協力

 

政府部門及び民間部門の双方における知的財産権に係る人材育成について協力する。日本は、ASEAN加盟国による知的財産権に関する能力の開発、向上、強化及び実施並びに知的財産権に関連する国際約束への加入促進を支援する。情報交換等の日本とASEANとの間の協力も奨励される。

 

5.基準認証の整備

 

ASEAN各加盟国の基準認証の整備及び整合性を支援するために、電気機器の安全性等の製品基準の分野で官民両部門における人材育成について協力する。

 

6.競争政策

 

日本が支援する技術協力プロジェクトの発展に向けて、競争政策に関するASEAN加盟国の能力構築の二一ズを特定するために、意見を交換し、経験、情報及びベストプラクティスを共有する。

 

7.中小企業

 

経営に関する相談、企業家精神の向上に係る研修の実施、企業集団の育成及び中小企業間のネットワークづくり並びに新たな情報通信技術における中小企業の能力及び電子商取引の潜在力の増進を通じて、長期的な能力構築を発展させ、中小企業の経営を改善するよう努力する。

 

8.自動車・自動車部品産業

 

ASEAN自動車産業の競争力を強化し、ASEAN自動車市場の統合を促進するため、官民対話、現状の調査、巡回専門家の派遣及び日本の経験とベストプラクティスを共有することにより、自動車産業分野で協力する。

 

9.交通に関する協力

 

a.2003年10月25日の第1回日・ASEAN交通大臣会合で合意した、日・ASEAN海上交通保安プログラム、交通物流プロジェクト及び日本における交通政策担当者研修を含む16の共同プロジェクト並びにこれらのプロジェクトに関する2003年−2004年の作業計画を実施する。

 

b.物資の輸送費用を削減して陸上運輸サービスの効率を改善するために貨物、交通基盤及び物流を円滑にし又は改善すること、陸上運輸サービスの効率を改善すること、航空運送及び海上運送の安全及び効率を向上させること並びに情報、経験及びベストプラクティスの相互交換により協力を推進することに関するその他のプロジェクトを形成し、実施する。

 

c.物流部門における人材育成を含む物流を、特に物資の流通の円滑化において、改善するための計画を形成し及び実施する。

 

10.観光業

 

a.観光業の発展を促進するために、共同の振興活動をはじめとした活動を通じて、協同して作業する。

 

b.日本人旅行者への対応に従事する旅行業者その他のサービス提供者を養成するために、ASEAN各加盟国において、日本アセアンセンターの運営によるセミナーやワークショップを開催する。

 

11.熟練労働者及びビジネス関係者の移動

 

熟練労働者及びビジネス関係者の移動を円滑にする方法及び措置を検討するために、出入国管理行政に関するセミナーを開催する。

 

12.情報通信技術

 

a.アジアの情報通信技術(ICT)における能力を開発し向上させ、また、アジアを1CTの世界的な中心とするべく、ASEANのための中期及び長期的計画を作成することにより、ICT分野における協力を強化する。

 

b.アジア域内における情報の流れを拡大し、地域を世界の「情報中心地」とする。ブロードバンドのためのネットワーク基盤の開発、ICT分野における人材育成の促進、電子商取引の促進及びICTを利用したその他の社会的・経済的活動の支援の重要性を認識し、「アジアITイニシアティブ」及び「アジア・ブロードバンド計画」等のイニシアティブを通じて次の措置を実現する。

 

・インターネット・プロトコール(IP)及び無線技術によりもたらされる利益を考慮し、国内の及び国際的な基盤構築に対する日本の支援を通じて、ブロードバンドのためのネットワーク基盤を更に発展させるための措置をとる。

 

・ネットワーク・インフラに関する共同の研究開発及び標準化に関する活動を促進する。

 

・ネットワークのセキュリティの確保とともに、日本とASEANにおいて使用されるシステムと互換性のあるインターネット・プロトコールの最新のバージョンヘの移行に関するノウハウの共有に努めつつ、ブロードバンドを更に普及するための措置をとる。このようなブロードバンドの普及は、多言語翻訳技術の開発、アジアの文化遺産の内容の保管並びにICT政策及びICT規制に関する対話における双方の努力を通じて電子政府、電子学習及び他のアプリケーションを開発するASEANの努力への日本の支援を通じて実現される。

 

・特に新しく高度な情報通信技術及び創造的マルチメディアの分野におけるASEANのICT専門家及び技術者の技術及び知識を向上させるために、専門家の交流、能力構築及び人材育成プログラムを促進する

 

・電子学習等のICTアプリケーションの標準化を促進し、電子商取引に関連した法的基盤を整備する。

 

13.日本アセアンセンター

 

日本アセアンセンターの機能を強化するために、また、産業部門、観光業及び中小企業活動における相互協力を含め同センターの活動範囲を広げ及び深化するために、同センターの改革のための協議を開始する。投資セミナー、産業把握プログラム等の有益であることが実証されている既存のプログラムを継続する。

 

B.経済発展と繁栄のための基礎の強化

 

1.ASEAN統合イニシアティブ(IAI)

 

地域統合を促進するために、ASEANにおける開発格差を是正するIAIの実現並びにその他の地域及び小地域による努力への支援を強化する。この観点から、日本は以下の措置をとる。

 

a.日・ASEAN連帯基金を通じた人材育成分野のIAIプロジェクト支援に加え、人材育成プロジェクト並びにハード及びソフトのインフラ開発、ICT及び地域経済統合等のその他の分野におけるIAIプロジェクトの実施を引き続き支援する。

 

b.力ンボジア、ラオス、ミャンマー及びベトナム(CLMV諸国)を支援するために、国際協力機構(JICA)の技術協力スキーム、特に第三国研修事業を活用する。

 

c.2004年度より、フィリピン、インドネシア、タイ及びマレーシアと協力して、CLMV諸国のための人材育成制度の強化に関するセミナーを開催する。

 

d.シンガポールと協力して、CLMV諸国のための現地国内研修コースを引き続き実施する。

 

e.労使関係に関するプログラムのためのASEANへの支援を行う。

 

f.ASEANの貧困な州及び都市が貧困軽減のためのベストプラクティスを共有し、貧困軽減プログラム実施のための資金を動員するプラットフォームを提供する、ASEAN知事会議開催というASEANのイニシアティブを支持する。

 

2.メコン地域開発

 

日本とASEANは、包括的なメコン地域開発のために、以下の行動を共同でとる。

 

a.日本は、メコン地域開発のための経済協力を充実させる。これには、例えば、「東西経済回廊」及び「第2東西回廊」といった大メコン地域(GMS)プログラムの下での11の旗艦プログラムのような協力として特定された既存のプロジェクト、道路、橋梁、港湾及び鉄道といった運輸インフラの整備、電力、情報通信技術及び水資源管理といった分野における協力、並びにメコン・インスティテュートの人材育成及びその他の活動が含まれる。地域開発に効果的な影響がある適切な案件に対する日本からの協力は、今後3年間で約15億ドルに達することが見込まれる。さらに、日本は、より効果的な協力のために、また、協力の重点分野を特定するために、関係国・機関との政策協議のためのミッションを派遣する。

 

b.日本とASEANは、とりわけ以下により、日本と地域の民間セクターの貿易・投資活動を促進する。

 

●メコン地域、特に新規加盟国に対する民間投資を喚起するために、国際協力銀行(JBIC)による海外投資金融を積極的に活用する。

 

●信頼できる貿易保険システムを提供する。

 

●新規加盟国において、起業家を育成するための教育プログラム、人材育成を強化するセミナー並びに国際ビジネスに関する技術及びノウハウを修得する訓練コースを実施する。

 

●新規加盟国における各商工会議所の現地企業を支援する能力強化を援助する。

 

●情報通信技術を活用し、メコン地域における情報の流れをネットワーク化し促進する。

 

●メコン地域における債券市場を育成する。

 

c.日本は、経済統合に向けた新規加盟国の努力を支援するとともに、制度・基準の調和並びにモノ・ヒトの移動の円滑化を支援する。

 

d.日本とASEANは、IAI及び「経済協力戦略」といったASEAN諸国のイニシアティブの支援における協力を強化する。また、両者は、アジア開発銀行(ADB)及びそのGMSプログラム、また、メコン河委員会、UNESCAP、世界銀行及びNGO等の組織との調整を強化する。

 

3.ブルネイ−インドネシア−マレーシア−フィリピン東ASEAN成長地域(BlMP−EAGA)

 

a.特に人材育成、インフラ及び貿易・投資促進の分野において、同成長地域の観光、輸送及びアグロ・インダストリー(大規模農産業)のセクターを共同で促進・強化することにより、地域統合への努力の一環として、他の関係者と協力し東ASEAN成長地域の開発につきBIMP−EAGA加盟国を支援する。

 

b.人的交流並びにモノ・サービスの流れを促進するために、東ASEAN成長地域の陸、空及び海を連結させた開発促進に協力する。

 

c.可能な共同案件を形成するために、成長地域の開発を支援するような具体的な協力分野を特定すべく、日本から協議ミッションをBIMP−EAGA加盟国に派遣する。

 

4.力ンボジア、ラオス、ミャンマー及びタイの「経済協力戦略」

 

力ンボジア、ラオス、ミャンマー及びタイの「経済協力戦略」に支援を行う。

 

5.東アジア開発イニシアティブ(IDEA)

 

IDEAの第1回閣僚会議の決定及びイニシアティブをフォローアップする努力を行うとともに、2003年8月30日のIDEA福岡シンポジウムで提言されたとおり、東アジア地域の開発方法を構築する観点から、ワークショップを開催する。

 

6.保健・社会福祉サービスにおける人材育成

 

意見、情報、経験及びベストプラクティスを交換するための定期的な会議を開催し、研修コースの開催など共同プロジェクトを策定・実施することにより、保健・社会福祉サービス・セクターにおける人材育成のためのパートナーシップを長期にわたり促進し、構築する。

 

7.産業人材育成

 

a.技術協力やその他の枠組みを通じて、労働安全衛生、ICT、自動車、電機・電子分野及びその他の高度に熟練した人材(エンジニア、中間管理職)の育成に協力する。

 

b.流通物資の追跡可能性を強化するモデル・プロジェクトを実施するとともに、ASEANの地元の組織にモデル・プロジェクトからのノウハウと情報を普及させるセミナーを実施する。

 

c.円借款、その他のODAスキームあるいは民間資金を活用し、効率的な物流のための交通網を含むインフラ開発に協力する。

 

8.貿易促進及び外国直接投資の円滑化

 

a.日本企業による現地通貨を通じた現地市場の開拓促進等により、ASEAN加盟国における日本企業による外国直接投資を促進する。これは、ASEAN加盟国における生産能力の増大及び地域内貿易の拡大につながる。

 

b.ASEAN加盟国の日本商工会議所のメンバー企業並びにCLMV諸国に関心を有する潜在力のあるASEAN企業から構成される投資調査ミッションをCLMV諸国に派遣することに協力する。

 

c.JBICの海外投資金融の供与を通して、ASEAN加盟国における日本企業の投資活動を促進する。

 

9.技術及び管理ノウハウ

 

a.製品開発の進展・改良、生産性向上及びビジネス・マネジメントを教育するモデル事業の実施を目的として、CLMV諸国の地元ビジネスマンと起業家に対する起業教育プログラムを策定及び実施し、地域社会に適した教育プログラムを開発及び実施する。

 

b.貿易関連手続き、貿易金融及びマーケティングを含む国際ビジネス問題に関する技術とノウハウを習得するために、CLMV諸国において地元実業家向けの研修コースを開催する。

 

c.新規加盟国の商工会議所に巡回専門家を派遣し、貿易手続き及びマーケティング等の必要な情報の提供により地元企業が国際ビジネスを行うことを支援する能力を強化する。

 

10.科学・技術分野での人材育成

 

共同セミナーの開催、共同研究の奨励及び意見、情報、経験及びベストプラクティスの交換等を含む様々な措置を通じて、科学・技術分野での人材を育成する。

 

11.エネルギー協力

 

a.エネルギー政策対話を発展させ、東アジアにおけるエネルギー安全保障を強化するために、エネルギー供給セキュリティー計画(ESSPA)やエネルギー効率及び省エネルギーの推進(PROMEEC)等、日ASEAN協力の下で現在実施中の能力構築プログラムを支援する。

 

b.譲許的な借款、その他のスキームまたは民間資金を活用して、発電所、石油・天然ガスのパイプライン網等のエネルギー施設を含むインフラの整備に協力する。

 

12.農業分野における人材育成

 

ASEANの若い農業従事者が日本の農家とともに働き、実際に経験することによって、技術、管理、農業労働上の倫理を学ぶための機会を提供し、農業分野における人材の育成をはかる。

 

13.食糧安全保障

 

生産物の価格安定を確保し、ASEANの農業従事者の福祉と地域の食糧安全保障を促進するため、ASEAN+3農林大臣会議の下での東アジア緊急米備蓄制度の早期設立及びASEAN食糧安全保障情報システム・プロジェクトを支援する。

 

14.食品安全

 

食品安全につき密接な協力関係を構築するとの見地から、協議を行う。

 

C.政治・安全保障協力及びパートナーシップの強化

 

1.日本は、恒久的な平和、永続的な友好及び協力を促進させるため、東南アジア友好協力条約(TAC)に加入する。

 

2.2003年10月に東京で開催された日・ASEAN安全保障シンポジウムの提言、日・ASEANフォーラム及び日・ASEAN拡大外相会議における政治・安全保障協力を強化するためにとられたその他の決定、イニシアティブ及び手段を検討する。高級事務レベル会議の議論を支援するために、日本とASEANは、政府職員及び国際戦略問題の研究所の代表によるトラックIIネットワークを設置し、2004年には、更なる検討と手段の提言のための日本とASEANからなる専門家チームを召集する。

 

3.防衛・安全保障担当職員間の緊密な協議を促進し、交流プログラム及び共同研究を継続する。

 

4.地域の平和と安定を促進するために、ASEAN地域フォーラム(ARF)の更なる強化に緊密に協力する。

 

5.大量破壊兵器の拡散に反対し、効果的な輸出規制を採用・実施し、また、核兵器を含むすべての大量壊兵器の全面撤廃という軍縮問題に関して、市民社会の参加を含め、様々な行動志向的な措置を通じて緊密に協力する。

 

6.すべてのテロ対策関連条約及び議定書の早期締結及び実施、並びに決議1373を含むテロ対策に関する国連安全保障理事会諸決議の完全なる実施の支援と確保を通じて、テロとの闘いに引き続き緊密に協力する。テロ対策に関する共同の会議を開始すること、マレーシアにおける東南アジア地域テロ対策センターの活動を支援すること及びテロに対する能力構築プログラムの一環として、ASEAN諸国からの法執行担当職員に対する研修を供与することは、今後推進すべき活動である。

 

7.国境を越える犯罪に関するASEAN+3閣僚会議といった既存のメカニズムを通じ、国境を越える犯罪との闘いに協力し、情報交換及び連絡手続きの確立に関する取極を歓迎する。

 

8.人の密入国及び人身取引のような犯罪の根本原因に取り組み、より効果的な情報共有措置を発展させることへの焦点を強めることにより、これらの問題と闘う努力を強化する。

 

9.日本は、法執行、出入国及び航空保安の分野において、ASEAN加盟国から研修員を引き続き受け入れるとともに、テロ対策能力を強化するためにASEAN加盟国に対する支援を行う。

 

10.日本は、地域の不正薬物問題へ対処する努力として、特に黄金の三角地帯のASEAN加盟国を支援するため、国連及びその他の援助源を通じて二国間並びに多国間の協力と支援を強化する。

 

11.アジアにおける海賊及び船舶に対する武装強盗対策のための地域協力協定の完成を歓迎する。

 

12.海賊対策のための訓練演習の実施、不正薬物及び人身取引といった国境を越える組織犯罪の防止及び抑止、海上保安当局と関係当局者間のネットワーク構築により地域の平和と秩序の維持に貢献するといった様々な手段を通して、海上保安当局と関連当局との協力を促進する。日本は、ASEAN加盟国の海上保安及び関連当局に対して能力構築を支援し、可能なハ一ドウェアを提供するとともに、海上保安当局と関連当局間で意見交換を行い、海上安全保障を強化するための既存の協議メカニズムを拡大する。

 

D.人材育成、交流及び社会・文化協力の促進

 

1.教育における人材育成

 

a.基礎教育が国造りの基盤であることを認識し、ODA及びその他のスキームを通じて、基礎教育へのアクセスの拡大と教育の質の向上に協力する。

 

b.ASEAN大学ネットワーク/東南アジアエ学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED−NET)を通じ、また、提案されたマレーシアにおけるマレーシア日本国際技術大学などの中核センターを設立することにより、科学技術、工学及び企業経営の人材育成を促進する。

 

c.日本は、研修奨学金(フェローシップ)/奨学金を通じ、日本で勉強するASEAN留学生を引き続き支援するとともに、日本人学生がASEAN加盟国で勉強することを奨励する。

 

d.日本における様々な大学及びその他の教育機関において、東南アジア言語を含む東南アジア研究を促進し、地域内で東南アジア研究に従事する大学間のネットワークを構築する。

 

e.日本とASEANとの間で、外交官を含む公務員の研修及び交流プログラムを促進する。

 

f.日本は、CLMV諸国のすべてに人材育成センターを設立し、とりわけ、ビジネス教育及び日本語教育を提供し、機材を供与し、専門家や青年海外協力隊及びシニア・ボランティアを同センターに派遣して研修コースを実施する。

 

g.日本は、国際交流基金の様々なスキームの支援を得て、日本語の教育資機材を供与し、日本語専門家を派遣し、また、日本での研修プログラムのためにASEANの日本語教師を招請する。

 

h.日本は、CLMV諸国で設立される人材育成センターにおける、ブロードバンドによるインターネット接続を活用した電子学習の機会を検討するために、ASEANにプロジェクト形成調査団を派遣する。この電子学習プロジェクトの実現は、ASEAN加盟国と日本とが共同で行い得る。

 

i.日本は、ASEAN加盟国の学生に対し、日本の大学への入学に関連するすべての適切な情報を引き続き提供する。さらに、母国にいながら日本の大学への入学を円滑にするために、日本留学試験を引き続きASEAN加盟国内において実施する。

 

j.高等教育機関の間の単位互換を奨励する。

 

k.ASEAN大学ネットワーク(AUN)とアジア太平洋大学交流機構(UMAP)のイニシアティブの下で更なる教育交流を発展させる。

 

2.青年交流

 

a.日本は、今後5年間に、様々な交流スキームの下で、留学生を含めて、1万人のASEAN青年を招請する。これらのスキームにおいてASEANからの留学生を一層魅きつけるために、日本は、ASEAN加盟国からの留学生の日本滞在に資するような環境の改善に努める。

 

b.日本は、ASEAN加盟国の学校などの認知された機関で日本語を教える青年ボランティア及びスポーツ分野の研修コースを実施する専門家の派遣等、青年の活動を促進する。

 

c.東南アジア青年の船事業及び日・ASEAN友情計画を引き続き支援する。

 

3.草の根交流

 

市町村の間の交流を促進する。また、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)及び国際交流基金のスキームを活用し、草の根交流を強化する。

 

4.知的交流

 

a.政治や国際法などすべての研究分野における学識者の交流、及び芸術・科学分野の大学院生の交流プログラムを促進する。これらのプログラムは、日・ASEAN学術交流基金(JAEP)及び国際交流基金により資金提供を受ける。

 

b.日本学術振興会からの支援を受けた研究者の交流を通じ、研究協力を促進する。

 

5.文化交流の強化

 

国際交流基金を通じた資金援助を得て、様々な文化・芸術事業の開催及び実施等による文化交流を積極的に促進することで、日本ASEAN交流年2003のモメンタムを維持する。

 

6.文化遺産の保存

 

a.有形・無形の文化遺産の保存及び修復、並びに力ンボジアのアンコールワット、ラオスのワット・プー、ミャンマーのバガン、フィリピンのコルディレラの棚田及びベトナムのミーソン遺跡、及び日本の支援を必要としうるASEANにおける他の同様の遺跡における文化遺産と史跡の修復に協力する。

 

b.日本は、文化的遺産の保存のためのASEANの技術支援の二一ズを検討する専門家を派遣するとともに、ASEAN加盟国からの政府関係者及びその他の専門家の日本における研修、スタディ・ツアー等の活動を手配する。

 

7.情報の普及と広報における協力

 

a.相互理解を強化し、日・ASEAN関係を強化するために、ジャーナリストの交流及び報道関係者の能力構築など、情報の普及と広報コミュニケーションにおける協力を引き続き促進する。

 

b.日本は、ASEAN経済共同体をはじめとするASEANの日本における一層の理解を促進するために、日本アセアンセンター及びASEAN事務局と協力して、広報コミュニケーション計画の開発においてASEANを支援する。

 

E.東アジア協力の深化

 

1.東アジア・スタディ・グループにより提言され、2002年のプノンペンでのASEAN+3首脳会議により採択された26の具体的な短期、中期及び長期の措置の実施に積極的に貢献する。

 

2.ASEAN+3プロセスが2006年に10周年を迎える前に、17の短期的措置の実施を速める。

 

3.地域の金融機関の設立、地域為替レート・メカニズムに関する調整及び東アジア自由貿易地域の確立等、9つの中期及び長期的措置に関して実行可能性調査の実施を検討する。

 

4.東アジアの観光と地域内及び世界におけるアイデンティティを高めるために、東アジア観光フェアの開催に積極的に参加する。

 

F.地球規模問題解決における協力

 

1.人間の安全保障の促進

 

人間の安全保障基金及び草の根・人間の安全保障無償資金協力といった、日本が支援する様々なプロジェクト等を通じて、人間の安全保障を共同で促進することを検討する。

 

2.感染症対策

 

a.世界エイズ・結核・マラリア対策基金が行う活動を引き続き支援し、ASEAN地域における感染症の抑制に協力する。

 

b.日本は、「沖縄感染症対策イニシアティブ」を活用し、また、「日・ASEAN感染症情報・人材ネットワーク」を構築して、ASEAN加盟国の感染症対策努力を支援する。また、日本は、感染症対策のための日・ASEANワークショップの開催も検討する。

 

c.日本は、SARS(重症急性呼吸器症候群)及びその他の新興感染症の対策に向けて、新興感染症に関する研究、モニタリング及び情報共有についての二国間及び多国間協力を更に促進する「ASEAN疾病監視ネット」を支援するための共同研究をASEAN加盟国において実施する。

 

3.環境保護

 

a.次の優先分野に焦点を当てる。

 

●地球規模の環境問題

 

●土壌・森林火災及び国境を越えるヘイズ(煙霧)汚染

 

●沿岸・海洋環境

 

●持続可能な森林管理

 

●自然公園及び保護地域の持続可能な管理

 

●淡水資源

 

●啓発及び環境教育

 

●環境上適正な技術とより汚染の少ない生産の促進

 

●都市環境管理と統治

 

●持続可能な開発とモニタリング、報告及びデータベースの調和

 

●野生動植物の持続可能な利用

 

b.2002年8月の持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)で立ち上げられたアジア森林パートナーシップ(AFP)を通じて、違法伐採対策、森林火災防止並びに荒廃地の復旧及び造林の分野での協力を促進する。

 

c.2002年11月のラオスでの会合において、ASEAN環境大臣により特定され、ASEAN+3環境大臣により合意された10の優先分野の一つである国境を越えるヘイズ(煙霧)汚染に取り組むための協力を模索する。

 

d.ASEAN環境上持続可能な都市プログラムの下で、地域の都市が直面している環境上の持続可能性という課題に取り組むために、ベストプラクティスと革新的な解決策に関する知見の共有を含む、セクションFの3aで言及された優先分野での能力構築プログラムの実施において協力する。

 

e.ASEANにおける環境保護と省エネルギーに関する制度の構築を支援するために、日本の「グリーン・エイド・プラン」(GAP)のASEAN新規加盟国への拡大に関する実行可能性調査の実施に協力する。

 

4.多国間貿易システムの推進

 

WTOの範囲内で、ドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉が意欲的でバランスのとれた解決を時宜にかなって達成するためのモメンタムを維持するべく協力する。

 

5.防災協力

 

防災協力の分野において、国連及びその他の国際機関と協力し、2005年1月に兵庫県神戸市で開催予定の国連防災世界会議の成功に向けて貢献する。

 

6.その他の地球規模問題に関する共同の取り組み

 

次の分野において共同行動を考え、実行する努力を強化する

 

●国連の強化

 

●南南協力の促進

 

●人権の擁護

 

●貧困削減

 

7.基幹プロジェクトの設立

 

a.新千年期における躍動的で永続的なパートナーシップを築くため、基幹プロジェクトを設ける。ASEAN加盟各国はそれぞれ日本と共同で、特定の地域プロジェクトの実施を協力して調整する。

 

b.ASEAN事務局は、このようなプロジェクトの特定と開発に関して加盟国及び日本と協議する。

 

8.ルールに基づく多国間枠組のための協力

 

地域における主要当事者として、日・ASEANフォーラムなど既存メカニズムの活用を含め、日本とASEAN諸国の政府関係者間の定期的な意見交換を通じ、様々な地球規模の問題に取り組むべく、ルールに基づく多国間の枠組のための協力を強化する。

 

ll.行動計画実施のための制度的・資金的措置

 

1.この行動計画に掲げられた様々な行動と措置を実施するため、具体的な作業計画を作成する。

 

2.日本は、日・ASEAN協力を実施するために、ASEAN事務局に対して技術支援の供与を行う。

 

3.この行動計画の効果的な調整と実施のために、既存の資金メカニズムを強化する。

 

4.行動計画に掲げられた様々な戦略と措置を達成するために、互いに効果的で革新的な資源の活用を模索し、それぞれの能力に応じて必要な資源を提供する。

 

5.日・ASEAN関係及び協力を改善するために、日本及びASEANの政策及び行動に関し、対象を絞った調査を折々に実施する。

 

6.日・ASEAN関係における優先事項との一貫性を確保し、地域及び世界の動的な進展を踏まえて新たな緊急の協力分野を取り入れるために、日・ASEAN外相会議、日・ASEANフォーラム及び、日・ASEAN協議グループ会合(CGM)等の既存のメカニズムを通じて、行動計画の定期的なレビューを行う。

 

7.日・ASEAN外相会議を通じ、毎年の日・ASEAN首脳会議に行動計画の実施の進捗報告を提出する。