東大駒場の学問と雰囲気にマッチした「人間の安全保障」の教育研究を反映した教科書です。構想・企画からブツができるまで、驚くほど速かったのが編者としての印象です。(そう言えば、『国際関係研究入門』も速かったなあ。)編者の2名は、「人間の安全保障」基礎論のT(マクロ、国際社会と人間の安全保障)とU(ミクロ、人間存在と人間の安全保障)の担当者です。序章と終章をそれぞれ書いています。
2004年に立ち上げた東京大学大学院「人間の安全保障」プログラムには、構想段階から関わっていました。秘話の類になるかも知れませんが、人間の安全保障について私が詳しかったからというわけではなく、国際的で学際的な研究している駒場の大学院に相応しいテーマが何かないかと考えあぐねていたら、人間の安全保障に邂逅したのです。研究も大切だけど、実践こそが重要だという教育方針も、このプログラムの新機軸です。
教科書としては、体系性ないし大系性が少ないかな、と少し気にしています。他方で、人間の安全保障という問題設定で括ることのできる学問分野や問題領域の広さを印象づけることには成功したかな、と自己評価しています。読んですっきりしたとか面白かったとかいう類の本ではないので、売れ行きはあまり芳しくないようです。もっと関心を持ってもらいたい分野なんですけれどね。
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