国際関係論
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小和田恆・山影進(共著)『国際関係論』(放送大学教育振興会、214ページ、2400円)が出版されました。2001年度に駒場の国際関係論大学院の客員教授を務められた小和田氏との共同作業による放送大学大学院科目の国際関係論の教材です。大学院科目ですが、専門課程ではなく大学院向け一般教養(?)なので、学部レベルの国際関係論を既修していることを前提にしていません。その意味では、知的レベルの高い入門書と言えるでしょう。第1部国際関係の基礎、第2部現代国際関係の諸相、第3部日本外交とアジア太平洋の3部、全15章から構成されています。
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◆ 短評 ◆
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本書は、大学院の専門性を保ちつつも、初めて国際関係論に接する者でも理解ができるようにという配慮から書かれたテキストである。専門性と一般性の両立という難しい課題に対して、本書は、国際関係論における最先端の研究でありながら、従来のテキストでは十分に扱われてこなかった理論とトピックを、あえて平易な言葉で論じることで応えようとしている。
この作業は、三つの斬新な視点をとることで具体化されている。第一に、通常はせいぜい理念的な議論しか行われない「国際関係論」という学問分野そのものの意味や必要性を実際の国際関係史の文脈と関係づけながら示している点である。第二に、西欧主権国家システムを相対化し、非西欧地域の国際(世界)システムとの関係のなかで近代国際関係史を描き直している点である。第三に、単に日本外交のあり方を論じるだけでなく、従来のテキストでは補足的に扱われることが多かったアジア太平洋地域との関り合いを軸にして戦後の日本外交を論じていることである。
現在の日本社会の国際社会に対する一般的な関心と最新の研究動向を融合させた本書は、放送大学大学院の学生のみならず、一般社会人から研究者までの幅広い人々にとって興味をそそられる一冊である。
東京大学大学院総合文化研究科・東洋文化研究所
山本和也氏(世界システム論)
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◆ 目次 ◆
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まえがき
第T部 国際関係の基礎
1 国際関係論とは何か
2 国際社会の捉え方
3 国際関係と外交
4 対外政策決定過程
5 国際社会の組織化
第U部 現代国際関係の諸相
6 平和と安全の確保
7 国際経済の管理
8 開発と人間環境
9 人間の安全保障
10 国際公共秩序
第V部 日本外交とアジア太平洋
11 第二次大戦後の日本外交
12 経済大国としての参画
13 冷戦後の新たな役割
14 アジア太平洋協力の重層的枠組み
15 地域主義と日本外交
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小和田恆・山影進『国際関係論』(放送大学教育振興会)
2005年4月30日更新
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