このプロジェクトでは、近代国際体系の歴史の再検討を進めている。私たちがこれからの国際関係のあり方を考えるとき、これまでの国際関係がどういうふうに編まれてきたのかについて理解を深める必要があるだろう。そのような視点を得るために、国際関係を大国間の外交関係に矮小化してはならない。一方で、経済構造によって規定され変わらぬ性格を持つものと強弁してはならない。我々の限られた能力を超えているかも知れないが、国際関係をどのように編んでいこうとしていたのかという当事者の認識に接近することが必要なのである。そのような立場で、以下のようなことに焦点をあてて研究は進められている。 ◆ヨーロッパの中でどういうふうに国際関係は生まれてきたのだろう。 ◆ヨーロッパと非ヨーロッパの関係はどう理論づけられてきたのだろう。 面白いことに、この二つのプロセスはほぼ同時進行しているのである。両者の間にはどのような関係があったのだろう。興味は尽きないところだ。これまでの国際関係史とは異なる歴史像を引き出すことが出来ると確信している。 |
◆ ニュータイプシミュレータ開発 ◆ |
このプロジェクトは、コンピューターを利用したシミュレーターの開発・適用を進めることを通じて、国際関係論を含む社会科学における研究・教育ツールの充実を目指しています。プロジェクトの大きな柱は、「マルチエージェント・シミュレーション」と「社会ネットワークゲーム・シミュレーション」の2つです。 |
◆ マルチエージェント・シミュレーション ◆ |
マルチエージェント・シミュレーションとは、コンピューター内の多数の「生き物」に同時進行的に一定のルールを実行させ、その結果出現する「現象」を観察するためのシミュレーションの技法です。米国サンタフェ研究所の活動などで有名な「複雑系」(Complexity)の研究を推進することを目的の1つとして発展してきました。 たとえば、互いに虎視眈々と隙をうかがう多数の国家が、合従連衡を繰り返しつつ闘争を展開した場合、いかなる状態が出現するのでしょうか。単一の世界帝国でしょうか。それとも勢力均衡でしょうか。こうした問題を考えるひとつの方法は、好戦的な行動ルールを持つ「国家」をエージェントとする、マルチエージェント・シミュレーションを実行することです。これは国際関係の問題への適用例ですが、マルチエージェント・シミュレーションの射程が、広範な社会・自然現象に及ぶことは、容易に想像がつくことと思います。 本プロジェクトでは、このマルチエージェント・シミュレーションを、日本語環境でより平易に行うことができるMAS(Multi-Agent Simulator)というシミュレーションシステムを開発してきました。MASを使えば、コンピューター・プログラミングの知識をほとんど持たない研究者や学生でも、簡単にシミュレーションモデルを作ることができます。また、プログラミングの初心者がすぐに実行できるサンプルモデルも多数用意されています。 MASの開発については、シミュレーター開発ならびにプロジェクトの総括を(株)構造計画研究所、実証実験の実施を国際大学GLOCOMが担当し、教育現場への適用について、東京大学大学院総合文化研究科、同経済学研究科、同大附置東洋文化研究所が協力して進めてきました。 MASのソフトウェアは、(株)構造計画研究所・創造工学部のホームページにて登録の上、ダウンロードすることが可能です。MAS使用に関する損害について、当研究室では責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。 また、MASを用いたモデルの紹介や研究報告を掲載したワーキングペーパー(pdf形式)を当ホームページよりダウンロードすることができます。そちらもあわせてご参照ください。 マルチエージェント・シミュレーションに関する情報および研究成果は、学術創成プロジェクト「マルチエージェント・シミュレータによる社会秩序変動の研究」のホームページにて随時発信していく予定です。こちらもあわせてご参照ください。 |
◆ 社会ネットワークゲーム・シミュレーション ◆ |
ネットワークゲームとは、文字通り、LANやインターネットを通じて、人間対人間あるいは人間対コンピューターがプレイするゲームのことです。本プロジェクトでは、そのようなネットワークゲームを、社会科学の様々な実験に手軽に適用できる環境の構築を目指しています。 ここで想定されているのは、「囚人のジレンマ」のような、ゲーム理論で取り扱われてきた抽象的なゲームから、軍事抑止や商取引など、具体的な状況設定を与えて行うゲームなど様々です。ただ、どのようなゲームをプレイするにせよ、生身の人間が関わる以上、状況の誤認や相手プレイヤーの意図・行動の誤解、プレイヤー同士の様々な駆け引きなどがゲームの帰趨に一定の影響を持ってくることが予想されます。本プロジェクトの研究上の関心のひとつは、社会的な相互作用における、こうした認知的要因や駆け引きの作用を実験的に解明することにあります。 コンピュータ−を用いたネットワークゲームとしては、すでに、二酸化炭素の排出権取引をシミュレートした実験環境など、一定の成果が現れつつあります。本プロジェクトは、こうした成果を踏まえた上で、社会科学全般への適用を念頭に、さらなる一般化の可能性を検討しています。プロジェクトそのものは、現時点で開発途上にあります。まとまったアウトプットが出次第、順次公開していく予定でいますので、しばらくお待ちください。 |
現在、山影研究室が取り組んでいる研究プロジェクトは、大別して、近代国際体系史に関するものと、研究・教育用のシミュレーター開発に関するもの、そしてASEAN・アジア太平洋研究の3種類があります。 各々大学院の授業と連動していますので、そちらもご覧ください。 |
このプロジェクトでは、日本にとって非常に重要な地域であり続けている東南アジア(あるいはASEAN、あるいはアジア太平洋)についての研究が多面的な視点から進められている。 この地域の研究は、日本にとって重要といった卑近な理由からのみではなく、国際関係のありかたや性質について理解するうえで、非常に興味深く、本質的なヒントを我々に与え続けている。単に国民国家の集合体としてこの地域をとらえることを拒否し、様々な主体の関係性という視点で、この地域とその歴史をとらえてみるとどんなものが見えてくるでしょう。 この営みに出来るだけ多くの方に加わって頂くために、基本資料のデータベースを作成しました。是非、ご活用ください。 日本・ASEAN関係基本資料 データベース閲覧 |
◆ 近代国際体系史研究 ◆ |
◆ ASEAN・アジア太平洋国際関係研究 ◆ |